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 2013年度の総整備売上高は5兆5169億円で2年度続けて増加となった。作業内容別整備売上高も事故整備売上高以外はすべて増加した。「アベノミクス」による景気回復と、消費税増税前の駆け込み需要が影響したものと推測される。一方で、少子高齢化に伴い、長期的には自動車の保有台数が減少していくことや、若年層の自動車整備士の確保など課題も山積している。



◆総整備売上高は2年連続増

 日本自動車整備振興会連合会(日整連、橋本一豊会長)は、自動車整備業界の動向と変化の実態を報告した「2014年度版 自動車整備白書」を発行した。それによると、13年度の自動車整備総売上高は前年度から952億円増加(対前年度比1.8%増)し、5兆5169億円だった。14年6月末に調査したため、調査結果の実績は13年度のものとなる。

 業態別で見ると、専・兼業が775億円増(同2.9%増)の2兆7523億円で、ディーラーが90億円増(同0.4%増)の2兆5195円となりともに増加。増加率は専・兼業の方がディーラーよりも高かった。

 増加の理由は、政府の新経済対策「アベノミクス」による景気回復と、14年4月に実施された消費税増税の前に起きた下半期後半の駆け込み需要の影響と推測される。

 ただし、東日本大震災前の11年度調査時の5兆6021億円までは回復していない。10年度と比べると約1千億円少ない結果となっている



◆専・兼業とディーラーの概要

 ●専・兼業の概要●

 整備売上高=2兆7523億円

 事業場数=7万2224事業場

 整備要員1人あたりの年間整備売上高=1033万1千円

 整備要員平均年齢=48・0歳

 整備要員1人あたりの年間給与=354万円

 ●ディーラーの概要●

 整備売上高=2兆5195億円

 事業場数=1万6179事業場

 整備要員1人あたりの年間整備売上高=2190万5千円

 整備要員平均年齢=34・1歳

 整備要員1人あたりの年間給与=434万2千円



◆自動車整備市場を取り巻く社会環境

 13年度の国内総生産(GDP)の名目成長率は、前年度比1.8%増で2年連続のプラス成長。「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」の「三本の矢」を基本方針とする「アベノミクス」の政策効果により物価動向がデフレ状況を脱しつつあった。家計や企業のマインドが改善し、消費などの内需が拡大。企業収益の増加により設備投資が持ち直し、雇用・所得環境が改善に向かっていた。14年度の名目GDPは同1.7%増の見込みだ。

 家計調査における自動車維持費や内訳の自動車などの部品や関連用品費も前年度と比べて増加。13年は前年と比べて自動車の年間維持費は約2千円増加し、総支出に占める自動車の維持費の割合は前年と同じ5.3%だった。長期的に減少傾向にあった勤労者所得は対前年比で1ヵ月当たり約千円プラスとなった。

 また、12年度には「新エコカー減税」が開始。環境性能に優れた自動車を購入や継続した場合に自動車重量税と自動車取得税が免除・軽減された「エコカー減税」の後継。低燃費・低排出ガス認定車などはさらに自動車グリーン税制の対象となり自動車税も軽減される。これらが新車販売押し上げに効果があったと見られ、13年度の自動車販売台数は前年度比9.2%増の569万台(日本自動車販売協会連合会調べ)となった。



◆作業内容別整備売上高

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 13年度の車検整備売上高は2兆1682億円(対前年度比3.3%増)。2年車検が1兆6165億円(同1.4%増)で、1年車検は5517億円(同9.4%増)だった。業態別だと2年車検は専・兼業では増加したが、ディーラーは減少。10年に終了したエコカー補助金の反動減と、08年のリーマンショックによる新車販売台数の落ち込みにより、ディーラーの入庫率が減少したと推測される。一方、1年車検は各業態とも増加。大型貨物車の整備台数増加が要因と考えられる。

 定期点検整備売上高は3199億円(同9.2%増)。1年車検(2372億円=同9.4%増)、6ヵ月点検(386億円=同1.6%増)、3ヵ月車検(441億円=同16.1%増)とすべての作業内容で増加した。13年から新車販売が好調に推移していることと、震災後の大型貨物車の増加、景気回復が理由として考えられている。業態別では専・兼業が942億円(同6.7%増)、ディーラーは2091億円(同12.5%増)と10%を超えている。車両販売時のメンテナンスパック加入提案が強化されている効果が現れていることがうかがえる結果となった。


 事故整備売上高は1兆2303億円(同3.4%減)。12年の自動車保険料率変更の影響でリサイクル部品や修理料金の低減が影響したと思われる。また、きめ細かな提案営業で安価な方法を提案したとも推測される。また、13年の交通事故発生件数が62.9万件と前年に比べて3.6万件(5.4%)減少したことも影響したと考えられる。業態別でも専・兼業が5711億円(同2.9%減)、ディーラーは6022億円(同4.0%減)とともに減少した。

 その他整備売上高は1兆7985億円(同2.4%増)。業態別では専・兼業が8170億円(同5.1%増)で、ディーラーは8995億円(同0.5%減)となった。新車販売の造花や景気回復に伴い、臨時整備や一般整備、新車整備、部・用品の取り付け、カーケアサービスなどが増加したものと思われる。



◆労働条件の動向

 整備要員の平均年齢は4年連続で上がり続けていて14年度は43.8歳(対前年度比0.3歳増)となった。業態別では専・兼業は48.0歳、ディーラーは34.1歳でともに同0.3歳増だった。団塊の世代に当たる高齢者に加え若年労働者の退職も増えたが、若年整備要員の採用に努めたことで平均年齢の増加幅は前年並みに抑えられたと考えられる。

 整備要員の年間平均給与は専・兼業は354万円(同0.6%増)でディーラーは434万2千円(同1.5%増)。専・兼業は1人あたりの年間整備売上高の増加、ディーラーは新車販売増加による企業業績の回復が増加の理由と推測される。



◆自動車保有台数の推移

 自動車保有台数(8027万2千台)は、HVや軽、コンパクトカーの新車販売が好調で、増加しているが、小型貨物車や、軽貨物車、バス、小型乗用車は減少傾向。維持費の安さや性能向上、車種の増加が続く軽乗用車やHVが多い普通車に加え、大型貨物車や被牽引車も増加しており、減少分が相殺され保有台数は同水準となる見込みだ。この傾向はしばらく続くものと予想される。

 自動車は1.7人に1台の普及率となっており、新車販売は買い替え需要に依存する構造になっている。中長期的には人口減少や高齢者人口割合の増大などが進み、保有台数は緩やかに減少していくと見られている。

 09年から急増しているHVの保有台数は年間100万台弱増加し、13年度末には380万台を超えた。車種も増加しており、このペースで行くと16年度には850万台弱に達すると推定され、四輪車全体の保有台数の1割を超えることになる。

 車齢は近年一貫して延び続けていて、長期使用車両は増え続けている。車齢9年以上の車両割合は全体の40.3%と4割を超えた。長期使用車両のユーザーをターゲットとした取り組みがますます重要になってくる。長期使用車両ユーザーに点検と予防整備を勧めるツールが整備されてきており、入庫回数の増加とメニューの多様化で整備売上を増加させることがポイントとなってくる。



◆若年整備要員の育成

 整備士を育成する専修学校の自動車整備学科の14年度の定員数は1万2617人、入学志望者数は9892人で入学者は9193人となった。前年度に対して入学定員数は減少したが、入学志願者と入学者は微増している。入学定員は09年度と比べると約9割の水準となった。

 日整連が行う整備資格を取得するための登録試験の受験者数は、04年度の7万2623人をピークに減少を続け、14年度は4万3863人だった。

 今後も少子化は進むことが予想され、自動車整備学科への入学希望者や整備士資格試験を取得するための登録試験の受験者数への影響も進み、人材の確保がますます難しくなると予想される。国土交通省は勉強会を実施し、以下の6つの基本方針を示した。(1)戦略的なリクルート(2)事業・資格の魅力の向上(3)労働環境の改善(4)分業組み合わせの促進(5)女性の活用(6)外国人の活用。また、14年4月には「自動車整備人材確保・育成推進協議会」が設立された。自動車整備のPR活動などで高度な整備技能、知識を持つ人材の確保や育成をする施策が行われている。



◆人材確保の状況

 現在の事業場の人材確保の状況についての調査では全業態によると「整備士不足の状態にない」が45.2%で最も多く、「整備士不足の状態にあるが、事業への影響は少ない」が37.0%「整備士不足の状態にあり、事業に影響をきたしている」が10.9%となった。「整備士不足の状態にない」が最も多かったものの、「整備士不足の状態にあるが、事業への影響は少ない」と「整備士不足の状態にあり、事業に影響をきたしている」を合計すると47.9%となり約半数の事業場で「整備士不足の状態」となっていると言える。

 業態別で見ると「整備士不足の状態にない」の回答が専・兼業が54.3%だったのに対し、ディーラーは28.3%だった。専・兼業は従業員数が少ないため、人材確保はある程度弾力的な活動ができると考えられる。

 一方、「整備士不足の状態」はディーラーが63.2%で専・兼業の39.9%を上回った。ディーラーは企業規模が専・兼業よりも大きく、人員の確保の必要性が高いためと思われる。

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