昨年末に同誌が実施した「2015部品商アンケート」結果には、カーアフターマーケットの中で地域部品商の置かれた環境や課題点などが大きく反映されている。
先月号で紹介した前編では、昨年4月の消費税増税前の駆け込み需要の反動減や2014年問題の影響を受け部品需要が大幅に減少、9割の部品商が「景況が悪化した」とするなど、補修部品業界の厳しい現状が浮き彫りとなった。
後編では、市場動向予測に加え、今後の営業方針、補修部品業界で生き残りを図るうえでの将来展望などについて聞いた結果をまとめた。
(1) 2015年の補修市場の景況予測は。
やや悪化する 36%
悪化する 32%
やや好転する 23%
変わらない 9%
(2) 自動車業界(含アフターマーケット)において特に今後の動向が気になるのはどんなことですか。
「EV、FCVの保有動向、電池の進化」
「水素生成技術(粉末水素の動向)」
「中古車の輸出マーケットに対する補修市場をカバーするための新規市場開拓」
「EV、HV車の増加、ボディパーツの減少」
「一般ユーザーのディーラーへの入庫が目立つ」
「HV車、次世代型自動車が拡大して、保有の減少が過熱するので補修市場が縮小する」
「価格競争(品質低下)が激しくなる。同時にE-マーケットが無秩序に拡大するので、
更に競争が激化する」
「エコカーの増加」
「モータースの廃業」
「地方都市における国内産業の衰退」
「民間整備工場の設備投資とメニュー改善」
「次世代車の普及、ネット販売の普及」
「HV等の新技術搭載車に対して、知識・修理技術・診断装置・工具等の投資をどこま
で対応する覚悟があるのか」
「車作りの進化に補修部品の現場がどんどん取り残されていく」
(3) 部品商という業種は将来も現状のままで存続すると思いますか。
・今後扱い品や販売先などを変化させて
存続する 56%
・存続自体が難しいと思う 32%
・今後も現在と同じ営業スタイルで存続
する 12%
・その他
「弱肉強食の到来」
「卸、共販の進出」
「従来どおりの業態を続行する限り、売り
たいときに売りたい方法でコストをかけ
ないE-マーケットに対して勝ち目はない」
(4) 事業継承への準備は整っていますか。
親族へ継承する 48%
まだ整っていない 31%
従業員に継承する 12%
M&Aを考えている 9%
(5) 今後、補修部品関連で成長の期待できる商材・サービスはありますか。
「バッテリー、タイヤ」
「リビルト品、エンジンオイル、検票、発注システムの活用」
「中古及びリビルトタイヤ」
「スマホとの融合関連、ドライブレコーダーを利用した安全運転記録システム」
「工場内のLED化による経営固定費軽減(エコ化)を地域を上げて実施」
「低価格商品タイヤ、除雪機」
「エコカーに関連して補修ケミカル」
「ドレスアップとカークリーニング関連の商材」
「年々車歴が伸びることで足回りの部品の交換率が上がる」
「HV関係商品」
「補修部品の情報サービスを付加しての販売」
(6) 卸商社、部品メーカーに対し提言・要望はありますか。
「問屋さんはもっと部品商に歩み寄ってアライアンスを強化すべき」
「Eコマースの攻勢に対抗する新機軸の構築」
「売れ筋純正部品の優良バリューチェーン、ジェネリック部品チェーンの構築」
「川下まで活力が届かない」
「全部協の地方の会議等に出席してもらいたい」
「純正品で頻度の高い商品を製品化していただきたい」
「卸商社=新商品の提案、メーカーとの価格交渉、新規メーカーとの取引」
「メーカー=優良部品 新商品開発、商品の勉強会の実施」
「市販への積極的商品開発提案力の強化」
「セールスのレベルアップ」
「10年後に部品商の数はかなり減る。今後お互いに生きる道を求めて、卸商社、
部品メーカーを交えてのフォーラムが必要」
「従来の概念は払拭し、集荷比率の高い商品の情報収集」
「レス率の悪化やメーカーに都合の良い施策で非常に苦しい」
「補修部品関連の情報をいち早く提供してほしい」
(7) 2015年の具体的な目標・経営戦略等があればお願いします。
「新規出店」
「当社及び他社の扱いのない(弱い)商材に重点を置く」
「営業力を強化し、顧客満足度のアップで、前年度以上の売上げ、粗利を確保す
る」
「現状維持を継続することでいっぱい」
「純正部品の牙城解体」
「近辺のモータースレベルでの補修部品の需要の中で当社がどのくらい戦えるか、
取り戻せるものは取り戻し、増やせるものは増やしたい」
「商品の勉強会やスキャンツールの研修会等をメカニック様向けに開催」
「原点回帰を基本に商品づくりが戦略。戦略なき戦術は気休めに過ぎない」
「大型ライニングの張り替えによる作業工賃の売上げ」
「共にライニングの販売に力を入れる」
「大型部品に強い部品商を打ち出す」
「ローター研磨等を地道にPRしていく!」
「インターネットを活用した販路拡大を目指したい」
「新商品、新サービスの拡充」
今年(2015年)の景況予測については、「悪化する」「やや悪化する」という回答が半数以上を占めており、当面は厳しい市場環境が続くとの見方が中心となっている。
今後の動向で気になることとしては、特に次世代車の普及とそれに伴う補修市場の縮小、競争の激化を危惧する声が圧倒的に多い。
前編(先月号掲載)でもわかるように、整備工場における次世代車への対応は遅れており、部品需要の減少につながるとして危機感を抱く部品商は多い。
「部品商という業種が将来も現状のままで存続すると思いますか」という問いには、約半数が「扱い品や販売先などを変化させて存続する」
と回答しており、現状と同様のスタイルのまま残れると考える部品商は1割程度にとどまった。多くの部品商が「現状のままでは生き残りは難しい」との認識を持ち、変化の必要性を感じていることがわかる。また「存続自体が難しい」という、より悲観的な回答も約3割にのぼっている。
事業継承については、「親族へ継承」とした回答が約半数で最も多い。一方で事業継承への準備が「まだ整っていない」とする回答も約3割にのぼり、今後に課題を残している。
今後成長の期待できる商材・サービスについては、バッテリーなどHVやEV等に対応し需要拡大が見込まれる商材、あるいはタイヤのように次世代車の普及後も需要に影響のない商材とに回答が大別され、次世代車の拡大に伴う商品構成の変化を見据えている様子がうかがえる。
卸商社や部品メーカーへの要望では、密な情報交換や商品開発など、メーカー・卸・部品商の3者でのより強い連携を求める声が強い。
2015年の目標や経営戦略については、営業力の強化や新商材の開拓といった部品商本来の業務を掘り下げていこうとする回答が多く、より厳しい市場環境が予測される補修部品市場において、足元を固めることで変化に対応しようとする傾向が強まっているとみられる。